N経済研究所

海底の奥深く 財宝は静かに横たわる

Friday, March 03, 2006

ドミトリー

 各国からろくでなしが逗留している。一人はイスラエル人。こいつはソロモン諸島からやってきた。二人組はアメリカ人のフォトグラファーでハワイ経由でやってきた。夫婦者はイギリス人で、どこやらのジャーナリストであり、新婚旅行の為に1年間休暇を取り、こんな辺鄙なところで気取っている。
 ジャーマニーは訛りが酷くてジャーマニーであること以外は誰も解らず名前すら解らないので、我々の中では「クエスチョン」と呼んでいた。後は仲良しのロンドンっ子と他に代わる代わる入れ替わるどうしようもない人間の溜まり場であり。夜は女部屋から女性を呼び込み素っ裸で酒を飲んだりして楽しんでいた。
 当たり前だが旅行者に働いている人間など居るわけも無いから懐は寂しい。寂しくない者でも蓄えで数年食いつぶしていくのだから、ワーワーキャーキャーとはしゃいでばかりも居られない。ここは一つ節約の為にレストランでも行って飯を食らって帰ってこようでは無いかと言う話になり、街灯も無い暗闇、我々都会人にとっては殆ど漆黒の闇であるジャングルの中を片道45分歩いて町に唯一有るインディアンレストランへ向かった。

 道は獣道のようになっており、両側の熱帯樹から伸びた巨大な地上根が足に掛かる。見えるのは目の前1メートル弱、帰り道は不明、遠くには野犬の声、と懐中電灯を持ったイスラエルから離れたらどうにもならない場所であった。
 我々は45分かけて来たインディアンレストランにて、「比較的色々メニューがあるな」なんつってピッツァやらドリアやらを食し、他には店が無いので明日の朝食用にサーディンの缶詰、パスタ、水、コークなんてのを買いだめしてまた基地であるドミトリーへと戻った。

 程なくしてジャーナリスト夫婦がオーとかウーとか実に外人的な大げさな身振りでゲロを吐きまくり、徐々に部屋に居る人間の空気がおかしくなりはじめた。皆がゲロにまみれ、外に出てゲロをする者、トイレに篭る者2段ベッドの上で吐き散らす者が続出した。吐くまでの時間に差が有るのは体格による物なのだろうなと考えつつ自分はいつこの惨事に巻き込まれるのかと恐怖し震えながも結局なにも起こらずに寝てしまった。
 翌朝、そよ風が熱帯の木々の葉を揺らし爽快な目覚めを迎えると、今日よりこの宿に泊まるというヨウロッパのなんとかと言う男に、「インディアンレストランに一緒に行かないか」と約束し少しだけ微笑んだ。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home